合図

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以前の私が見たら、その情けなさに、怒るかもしれない。もしかしたら、殴り飛ばすくらい。 それでも思わずにはいられない。 苦しいほどに暴れる胸が吐き出してと叫ぶ。 「責任取りなさいよぉ!・・・・・・早くっ、・・・帰って、きて・・・」 ガタガタガタッ 突然の強い風。 神社全体が震えるように、体をきしませ、その振動が私にも伝わる。 障子越しにぽうっと淡い光が鬼火のように蠢き、しかしその光に気味悪さはない。 この幻想郷に不思議はない。 巫女としての役目を思い出し、そっと障子を開ける。 「わぁっ・・・」 淡く光る桜色。 舞い散る花びらが踊るように、境内を埋めつくし、そこにはほんのり色をつけた絨毯がしかれていた。 異変だろうか。 昨日までは、というか今日の夕方までは蕾とも言えないほど未熟だった芽は、今確かに咲き乱れている。 調べないといけない。 巫女としての役目がさっきまでの私を封殺して、準備しようと振り返る。 「はっ?」 「おはよう、霊夢」 あっ、あれは私のお茶・・・。 最初の感想は自分でもすっとぼけたものだった。 そして、それから数秒遅れてやってくる衝撃。 「はああああぁァァァ!?」 「霊夢、このお茶冷めてるわ」 いや、そこじゃないから! 「なん、なんっ、・・・」 「ナン?」 「なんでアンタがここに!?」 「だって霊夢が呼んだじゃない。紫ーって」 ニコリと笑うあいつは確かに会いたかったあいつだった。 嬉しさがやって来て、紫のセリフを思い出して、恥ずかしさが津波のように押し寄せてくる。 顔が熱い・・・。 .
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