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「聞いてたの!?」
「愛の力ねっ」
いやいや、聞いてない。
「じゃあ、まさか外のあれは・・・・・・」
「うん、私。ちょっと桜の開花の境界線を弄ったの。ちなみに明かりは籃ね」
「もう、あんたは・・・・・・」
驚きすぎて怒る気にもならなかったのもある。ニコニコ笑う彼女はもう齢何百歳だろうが、無邪気に笑っていて。
そう、あいつがいる。
今目の前で、触れられる。
ほろりと。
頬を滑る何か。
きっかけは些細。
あとからあとから流れては、とめどなく流れ出る。
悔しかった。
今まで何者にも侵入させて来なかったのに、こんなにも深く食い込んで離れようとはしない彼女の存在が。
火傷しそうなほどに火照った頬を、冷たい涙が滑る度、嗚咽が漏れる。
「ばかぁ、・・・ば、かぁ」
「そうね」
そっと抱きしめられる。
甘い香りは桜の香り。人とは変わらない温度が優しくて、余計に涙が零れた。
「あんた、なんてっ、・・・・・・あんたなんてぇ・・・」
「私なんて?」
「大好きだ、ばがぁ・・・」
「ふふっ、あらあら」
霊夢はよっぽど寂しかったのね、なんて笑うから痛くなるくらい強く抱きしめる。もう、離れられないくらいに。
「霊夢」
くいと持ち上げられた顎。
ほっそりとした指先は陶磁器のように滑らかで、気持ちがいい。
細められた瞳には私が映っていた。
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