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「あっ・・・」
中途半端な吐息。
どうしても期待してしまうその動作。つやつやな唇に目が行って離せない。
「ごめんなさい。謝っても許してくれないだろうけど。」
「うん」
紫がすっと目を閉じる。
徐々に近づいてくる端正な顔を私は受け入れた。
「んっ」
「っ、・・・んむぅ」
何度も何度も角度を変えて、その果実を味わう。柔らかな感触と甘さに魅せられて、幾度も吸いついた。
「んっ、・・・霊夢?」
「・・・何よ?」
私、嬉しかったの。
彼女は悪びれもせず、ニッコリとそう言った。
私と紫の唾液で濡れた唇から妖艶に輝いて、小さな舌がその表面をなぞって行く様がやたらといやらしくて。
恥ずかしくなった私は俯きながらその言葉を聞いた。
紫は続ける。
「朧気な夢みたいだった。でも、本当で、霊夢が私を呼んでいた。
起きたときにね、すごく胸がキュンとした。年甲斐もなくワクワクしてた。あなたがこんなにも私のことを愛していてくれたなんて、てね」
なんて自分勝手な言い草だろう。
泣いている私を見て、紫は喜んでいたのだ。
「・・・・・・不公平」
「えっ?」
許さない。お仕置き。
「・・・いっ、・・・っ」
抱きつきながら、首筋に顔を寄せて、甘噛みする。時々歯を立てながら、真っ白な首筋を唇で遊んだ。
「れ、・・・ぃむう」
「何?今お仕置き中なんだから」
「んっ、ちがっ・・・・・・もっと、して?」
あら、素直。
というか、喜んじゃってるわね。
「じゃあ、続きは寝床でね?」
力の抜けた紫をお姫様だっこで抱える。
視線は外。
桜色はとどまることなく、視界を踊り、その命を散らせている。
春の合図は、確かにそこにある。
END
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