ホットミルク

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埃っぽい空気に古ぼけた本の匂い。 ここが私の領域。 知識と英知が結集した幻想郷最大の図書館。数え切れないほどの本に埋め尽くされた私の生活は朝から晩まで本と共にある。 魔女である私には知識はいくらあっても困らないもので、力の源とも言っていいくらい。 だから私はまたページをめくった。 「パチュリー様っ」 「・・・こあ」 とたとたとた、と。 こちらに駆け寄ってくるのは、この図書館の司書の小悪魔、略してこあ。 胸に抱えられた大量の本は私の次に読むだろう本の山。 「こちらまだお読みになってないですよね?」 「ちょっと見せて。・・・・・・そうね、まだ読んでないわ」 「じゃあこちらに置いておきます。」 どすんと埃を少し巻き上げて、本が私の傍らに置かれる。傍には小悪魔。 まったく、パチュリー様はお読みになるのが早くて、とかなんとか苦笑しているようだが、私はそれに微笑で返す。 こあの仕事は本の整理と私に本を持ってくること。時々紅茶やお菓子を作ってくれたり。つまり私のお世話係。 可愛い部下だ。 言うことは何でも聞くし、よく気がきく。時々ドジなのがたまにキズだか、働き者で笑顔が可愛くて、愛らしくて、柔らかくて・・・・。 という感じで、可愛い娘なのだ。 「そういえば、お嬢様が咲夜さんと月が真っ赤だから出掛けられるとか。あと、妹様は美鈴さんと魔理沙のところに遊びに行くと仰ってましたよ」 「ふーん」 「ふーんって・・・・・・、パチュリー様はどこかに出かけられないのですか?」 こあは尋ねる。 目的地がないわけでもない。でもなんとなく気が向かないのだ。幾年も居続けた居場所はあまりに心地が良くて、離れる気はなかなか起きないのが素直なところ。 だから、私は首を横に振った。 .
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