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「そうですか・・・」
「こあはどこか行きたいところでもあったの?」
「い、いえっ!パチュリー様を置いてなど・・・」
「そう?いいのよ、行きたいところがあれば言ってくれれば」
「言えば、・・・・・・パチュリー様も来てくれます、か?」
「それは聞いてみないと・・・」
「で、ですよねっ!出過ぎたことを言いましたっ」
そう勢いよく頭を下げるこあ。
からかいがいがあるのも、こあの可愛いところ。困惑に染まる顔を眺めていると、心の奥がうずうずして、たまらなくなる。
あー、私って結構Sだったのね。
なんて、新しい自分と対面していたら、もう夜も深くなってきたのだろう。空には血を零したような真紅の月が顔を目いっぱい寄せてこちらを覗き込んでいる。
これはレミィもさぞ機嫌がいいに違いない。咲夜はきっと今日可愛がってもらうことだろう。
ぽわっとそんなことを考えながら、またページをめくる。カサリという音と同時にカツンという足音。こあの足音だ。
いつの間にやら傍から消えていたと思えばどこかに行っていたようだ。その手には丸いお盆、とその上に二つのマグカップ。湯気を昇らせたそれらをこちらに持ってくるこあの足取りはどこか軽いようだ。
「パチュリー様」
「ありがとう、こあ」
そっと取っ手を握る。
中身はまっ白い液体がゆらゆら揺れ、表面には薄い膜がかかっている。
「ミルク?」
「はい。最近遅くまで起きられているようなので、本日はゆっくりしていただこうかと。安眠効果もあるホットミルクです」
こあは笑顔で答える。
私はそれに多少の驚きと微笑で返事する。
紅魔館は紅茶が主な飲み物だったりする。レミィが紅茶好きなのがそもそもの理由なのだが、咲夜の入れる紅茶がこれまた美味しくいつの間にか紅茶が主流だ。
その驚きもこあの優しさの前では小さなものだ。そっとこあの頭を撫でて、口をつければ仄かま甘さと特有の風味がいっぱいに広がる。
こあも私の表情に満足したのか、自分のマグカップに口をつけては、美味しいですねとそう笑った。
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