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長く長く何処までも続く黒い行列。
決まった歩幅、決まった速度で歩く人々。
皆が皆黒い衣服を着て、俯くわけでもなく胸を張るわけでもなく、気持ち良いくらい機械的に歩き続けていた。
いつもと変わらない、つまらない平和だ。
「ねぇ、お兄さん。黒色好き?」
不意に聞こえた女の子の声。
声の方へ首だけを向けてみると、そこには色の固まりがいた。
「……何で、黒くないんだよ」
赤に青に黄色、緑、紫、橙。
黒しか許されてないこの世界で、何故この子はこんなに色を纏っているんだ。
「あー、うー、お兄さんは青が似合いそう!うん、青が良いと思うわ」
はい、言葉のキャッチボール失敗。
いや、既に彼女はサッカーでも始めているのかも知れないな。
「僕に似合う色は良いから、何故君には色が」
おかしい。
なんだ。
これは。
「ほら似合う。やっぱり素敵」
一瞬の魔法。
頭から爪先まで黒一色だった僕を色んな青色が波のように襲い、全部全部塗り換えていく。
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