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ライムを買ってきた頃には、すでに食卓は肉じゃがが真ん中を陣どって待っていた。
急いで手を洗って、椅子に座る。
カタッと置かれた味噌汁の具は茄子。
そして、茶碗蒸し。
華やかではないけれど……誕生日ぽくもないけれど、どれも自分の好物だ。
「いただきます!」
手を合わせて言うと、涼さんの口元が上がるのが見えた。
「おいしい!」
…
…
洗い物をして、少しのんびりした後に順番に風呂に入る。
俺は体をいつもより丁寧に洗って、浴室から出た。
「あがったか」
濡れた髪を後ろに撫で付けている涼さん。
眼鏡はない。
まるでクラブではじめてみた姿のようでドキリとする。
俺を見るなり涼さんは冷蔵庫からコロナビールを取出し、ライムをビンの縁にかけた。
「風呂上がりのビールだなんて贅沢だな」
「そうなの?」
涼さんの隣に腰をおろして、コロナビールでカチンと乾杯をした。
「誕生日おめでとう、ハル」
低く囁かれるセクシーな声は、何度聞いても慣れない。
体が熱くなるのは、決してアルコールのせいではないと思う。
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