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あの時、叶わぬ想いだと思っていたのに。
もう5年も一緒にいるなんて、なんて幸せ者なんだろう。
「おにーさん」
もう一度、名前を呼んでみる。
そして、ぎゅっと抱きついた。
すると、
「ハル」
穏やかな声とともに、唇を重ねられた。
「ん……」
包み込むような、やさしいキス。
コロナビールとキャメルの味がする。
ああ、懐かしい。
この味を知りたくて、わざと他の男にコロナビールを頼ませたっけ。
キスを終えゆっくり目を開くと、涼さんの穏やかな表情が見えた。
同じキスの味なのに。
涼さんがそんな表情するなんて。
あの時見せていた冷たい瞳は、いつのまにかやさしい瞳になっていたことに気付いた。
「ハル」
「ん?」
「おまえに出会えてよかった」
普段は全く甘いことばを口にしない涼さんは、照れることなくまっすぐ俺を見て言った。
涼さんの本気がダイレクトに伝わってきて、俺もしっかり応えたいと思った。
「俺も……涼さんに出会えてよかった。これからも、ずっとそばにいたいです」
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