灰色裁判

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 ◆ ――来た! 緊張で停滞していた空気が、一気に加速する。 スサカドがこちらへ一歩を踏み出し、それにしたがって後ろの者達が続いてくる。 その数、およそ三十。 身につける装備に違いはあれど、皆等しく大振りな得物を手にしている。 スサカドを追う者は近接戦闘のための武器を握り、その場で足を止める者は火器や術を展開する。 先頭を行くスサカドは五歩でこちらへ手が届き、他も刃を届かせるには十歩とかからない距離だ。 向けられた凶悪な意思に、少女が思わず身体をこわばらせると、 「――失礼」 近くで聞いていた声が謝意を発したと同時、強烈な浮遊感に覆われ、 ――え、 次の瞬間、空中に投げ出されていた。 「ええ――!?」 抗議の叫びは完全に無視され、放り上げられた体はその高度を上げ続けていく。 ビルの四階を見下ろせるほどになったところで仰向けだった体が反転し、天から大地を見下ろす。 灰の街を見渡す視界の中で、真下に立つ審判官の重鎧が光を反射してきらめいた。 そして、 「JUDGE(審判を)……」 音が放たれた。 謳うように審判官が放った言葉は、誓いの聖句。 「JUDGEMENT!!」 裁きの開始を告げる咆哮が空気を打撃した瞬間、404の姿が掻き消える。 硬音の連続が豪風と共に駆け抜けて、走るスサカド達の間をすり抜けた。
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