灰色裁判

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重鎧の太腿、膝、脛の裏側、かかとに傷のように刻まれた紋章が光を放った。 輝きを増していく刻印が表す意味は『強化』。 光を宿す部位の機能を単純に強化する簡易術であり、一時的に身体能力を跳ね上げる。 術式を使えない戦士系も使う、短時間の能力ブーストだ。 下半身の各部に数倍の力を与える方陣が展開された瞬間、404は射撃の激流の外へと身を飛ばした。 蹴り出した大地に押し返され、足元で速度が爆発する。 標的を失ってなお突進する射撃の咆哮は、 「!!」 灰の街を突っ走って無彩色のコンクリートへ直撃した。 身体の真横を走っていった威力の津波が破砕を作るのを耳に、強化系方陣を再展開。 力を込めるために身を沈めていくと、折り畳まれていく関節に宿る光が強さを増した。 射角を変えようとする集団へ体を向けたまま、首と目の動きだけで放り投げた少女を見る。 上方への運動を続けていた体が視線を向けた瞬間に頂点へ到達したようで、 「――」 ゆっくりとその高度を落とし始めている。 下を向いた少女の、きゃ、で始まる悲鳴を聞き、404は再び加速に身を任せる。 二十メートル以上ある距離を一歩の跳躍で零にし、 「審判官への攻撃行為に、釈明の余地なし」 断撃が連続し、近接武器より複雑な銃火器や術式ごと罪人へ砕きを重ねていく。 断撃を鈍くして打撃に攻撃の質を近くすることで、衝撃で背後の壁へと吹き飛ばす。 「が……!」 折り重なって空中を飛び、背後からコンクリートの打撃を受けて悶絶する射手達を尻目に、404は爪先を軸に高速でターン。 唯一残っているスサカドと落ちてくる少女を視界に映し、己を加速に乗せる。 「闘争を……!決して飽食できぬ、無限の渇望を癒す闘争を!」 正面に見据えるスサカドは失った右腕に、新たな武装を装備した。
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