灰色裁判

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肩までの装甲を兼ねるその武器の、肘から先を作る形は異様の一言だった。 アーム接合部から黒煙を吐いて回転する刃は巨大なチェーンソーであり、地面をかすめる度に火花を散らす。 右腕だけが足首まで届くような異質な姿に、404は身体を深く沈めた。 「渇望は癒されることへの願望だろう」 「あいにく癒された果てを知らん!」 ならば、と全身に方陣の光を宿し、 「この敗北で悟れ!」 獣の咆哮を上げる鎖鋸を振り回すスサカドへ、低い軌道から体当たりごと断撃をぶち込みに行く。 頭上へ振り上げ、斜めに斬り落とす軌道のチェーンソーに対し、スサカドの左下へ潜り込むように接近して断撃を叩き込む動きだ。 交錯の刹那――、 顔面へ迫るチェーンソーを、兜の曲面で受け流しながら腰だめに騎士剣を構え、放つのは胴体狙いで高速の突き。 筋力任せで発射する。 放たれた刺突は、右足を下げて半身を回転させたスサカドの胸板を僅かに削り、脇の下へ透かされた。 バックステップで脇に差しこまれた刃から抜け出そうとするスサカドに、404は大剣を下から蹴り上げる。 「――!」 蹴りの衝撃が刀身を突き抜けたように、脇を捉えていた騎士剣から断撃が放たれた。 肉を引き裂く断裂音と共に、スサカドの右腕が肩から切り落とされ、宙を飛んでいく。 か、と息を吐き出してスサカドが仰け反り、反動で上体が下がってくる。 そこへカウンターとなる、正面から断撃をぶち込んだ。 「!!」 迷彩の上から着こんでいた装甲を叩き割り、押されたように背後へ倒れていくのを確認し首肯。 スサカドから目を離した404は剣を蹴り上げた脚を前へ突きだして走り出す。 身体を再加速に乗せながら、走りに行く先は少女が落ちる下だ。 両手で握っていた大剣を右手一本で持ち直しながら、二歩でたどり着く。 兜越しに天を仰ぎ、空手になった左手を広げ、 「――っと」 落ちてきた少女を受け止めた。
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