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門がある。
左右に立つ二本の石柱と、それを上部で繋ぐ半円のアーチで形作られたものだ。
ローマ建築を思わせる白塗りの石柱を外枠に、その隙間を漆黒の鋼が埋めて門となる。
その姿は暗闇の中にただ佇み、目の前に立てばいくら首を傾げてもその頂に視線は届かない。
大門だ。
世界を区切り隔てる存在である門は闇の中でただ独り立ち塞がり、彼の前に現れる者へと言葉を放つ。
『我を過ぐれば憂ひの都、
我を過ぐれば果てなき苦悩、
我を過ぐれば滅亡の民あり
良とした者は我をくぐれ』
神曲の一部をもじった文句を初めて聞く者は、必ずその一歩を踏み出すことを躊躇うものだ。
それでも、前へ踏み出す者に門は口を開けていく。
白黒の門をくぐると、しばらくは先と変わらない暗闇が続く。
それでも歩いていくと、ある瞬間唐突に、
「――!」
世界が晴れる。
突如明るくなる光景に目がくらみ、目が慣れてきた頃には背後の門は既に閉じている。
背後への道は無く、誰しもがあらためて目の前に広がる世界を見る。
広場だ。
赤色と白色の石を敷き詰めた道が巨大な噴水を中心にロータリーを形成し、その周囲を石造りの建物が取り囲んでいた。
それだけでは欧州のどこかに来ているような錯覚を感じてしまうが、
その上を通行する存在が異常だった。
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