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「このゲームって世界観を統一するとか、外観を気にするとか、そういうこと考える人いなかったのかな」
石畳のロビーを俯瞰できる階段の上から、少女は嘆息と共にぼやいた。
ログイン時に必ず通る大門を背後に、前にはゲームにインしているプレイヤーが集められるメインロビーが広がる。
『落ち着いた街の雰囲気を出したい』と本家wikiに書いてあったが、その街を歩いているプレイヤーの容姿のせいで逆効果になってはいないだろうか。
こうしている間も、対物ライフルを担いだメイドが歩いて行った。
長身のメイドは音もなく目の前を横切り、フィールド移動用ゲートに消えていく。
――ベタな方だなあ……。
男性でも女性でも、自身のアバターをメイドにデザインするプレイヤーは多い。
巨大な銃火器を装備したメイドの見た目もさることながら、優秀な支援系パッシブスキルを習得できるため、非常に人気が高いのだ。
街中を当たり前のように歩くメイドや、物干し竿のような長銃を見ても、普通の趣味の部類だと判断するようになってしまった。
毒されてる、と感じるのはそう判じることで、まだ自分は大丈夫だと思いたいからだろうか。
「いや、もう駄目かも――」
「――雰囲気を求めるプレイヤーはこんなゲームに足を運ばないのでは?」
突然横から、発した過去ログに反応した新たな声が響いた。
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