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◆
「――何を言っている!!」
激昂する声の直後、木材が破壊される断裂音が屋内に響いた。
破砕の音を出したのは、被告者が立たされるような大机。
直前に轟いた音は若い男の哮りだった。
白銀の重鎧で全身を覆い、漆黒のマントを背負った騎士。
巨大な肩部アーマーから伸びた革のホルダーが、背に担う大剣を支えている。
その装備の、全身に刻まれた無数の傷が、窓から差し込む陽光を乱反射させる。
酷使を重ね、なお威厳を失わない騎士は今、乱れた息を整えながら、頭上からの声を聞いた。
「口を慎め、審判官【404】。審判長(ジャッジマスター)への不敬に当たるぞ」
言われ、404は声の方へ顔を向けた。
バシネットを着けた審判官が、その円錐形のバイザーからこちらを正視する。
「私は理解ができないと申しました。不理解は審判長への不敬とおっしゃるか」
「不毛な発言を慎め。激情に任せ、会話を拒否するか」
「私の心を落ち着かせる言葉があれば、慎む口も持ち合わせよう……!」
名を呼ばれた404は、有角の兜越しに鋭い視線を声の方へと向ける。
404とは意匠の異なる鎧を着けた審判官は、鋼すら貫きそうなその視線を受け止める。
しばしのにらみ合いの後、404は正面へと視線を戻した。
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