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「……?」
主の分からない声は乱反射を繰り返し、灰壁に吸い込まれていく。
しかし、消えていった言葉に代わり生まれたものがあった。
動かぬ街に、無数の動く影。
群だ。
灰色に沈む影の中から、
摩天楼の隙間から、
うぞり、と現れ出る。
周囲と同じ灰の肌、泥にまみれ風化した装備。
不死兵。
「そんな……!」
それらは等しく、持つ全てを少女へ向けていた。
手に持つ円盤型弾倉を挿した分隊支援火器が、静かな殺意の刃が、ヘルメットの下から覗く濁った視線が少女を離さない。
数百余の気配を受け、少女は息を詰めた。
視線を左右に走らせるが、摩天楼は一つの壁となって退路を作らせない。
沈黙する少女に、嘲りの声が再び空気を叩く。
『ンだあ、一人かよ』
憤りにも聞こえる叫びは足音と共に接近し、
「――遠足気分で来たのか、んン?」
少女の前に立った者がある。
長身痩躯に着古して風化したような軍服を纏い、旧式の散弾銃を肩に担っている。
不死兵を背後に、まるでそれらを率いるように立った男は、肩を叩いてた銃に手を這わせ、
「いかんなあ」
いかんともさ、と男は銃を持たない手で腰の袋を探る。
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