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――1歩でも遠く、ここから遠くへ逃げてしまいたい
普段は気に入ってる、外套のような服が煩わしい。
身体の上下に合わせて背の杖が揺れるのが走り辛くて仕方がない。
よろけながら逃げる少女に、男はおう、と息を漏らした。
「死ぬ気で走れよ。なんならそのまま逃げ切っちまえ」
遠くなっている後ろ姿を見ながら、銃身に二発目を装填し、
「――なんて、な」
断裂音を響かせて、狙い澄ました弾が少女の足首を砕いた。
「っ!!」
機能を果たさなくなった足は、その結果として主を、
「かっ……!」
無色の大地に叩きつける。
少女の肺から全ての空気が吐き出され、一瞬の硬直の後にダメージが返ってくる。
「くあ……」
緊張と恐怖で手指が痙攣して、身体が起こせない。
撃たれた足首から、笑えるくらいのダメージの連続が脳に叩き込まれている。
「――いかんなあ、いかんとも」
全身に震えが走る少女の下へ、無数の不死兵を背景に男が近寄ってくる。
「一人でこんなところまで来たんだ。おおよそ予想は出来ていたんだろう?」
「くっ……!」
新たな銃弾を装填した銃口越しに、男は笑う。
「残念」
◆
銃口と目が合った瞬間、少女は身をよじって目を閉じた。
――死……!
だが、その瞬間が来ない。
「……?」
疑問の応答は、息を絞り出すような男の苦悶の声だった。
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