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「……審判官様が、こんな場所へわざわざ出向いてくるとは」
「“こんな場所”だからこそ、我々自ら足を向けなければならない」
壁に手を当てて立ち上がった男を前に、剣を上段へ掲げていく。
表情を隠した鎧を通しても分かる、凛とした声が響いた。
「――住民ID:726466、スサカドだな。
私は審判官【404】。一般住民との不法戦闘行為、及び違法武器の所持の現行犯により、審判を行う」
鈍く光る刃を向けられたスサカドは、足元に転がっていた散弾銃の残骸をつま先で蹴り飛ばした。
渇いた音を立てて転がっていく銃の残骸を目で追い、先を失った右ひじを抑えていたが、
「……か、」
かか、と物が詰まったように声を漏らした。
突然、決壊したかのように笑い出す。
「……?」
「ああ……わざわざ高い金払って違法武器に手を出した甲斐があった」
「……」
「見ろよ」
親指を立てて己の背後を見るように示す。
日を受けて灰色の建物が黒の影を作っていた場所――そこから、無数の影が湧き出した。
影はそれぞれが手に凶悪な外見をした得物を持ち、審判官と少女を睨みつける。
「わ……!」
「……【SAW'LD OUT】か」
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