第四日

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「雨かよーっ」 耳元でデカイ声がくわん、と響いて 「んがっ……」 だせえことに、ブタの鼻鳴らしが思わず出ちまった 目を開くと、視界いっぱいに茶色い2つの目 と、かろうじて鼻も 「雨なんだけどー」 聞こえてくる声は、もう慣れたアイツのものに違いない 「……3秒以内にどけ」 「おっはーイサギくん!」 ニッコニコで、ご丁寧に顔の横にパーの両手を添えている、アヤという名の 女 「……古い」 「ジャニ系の女装とかマジ好みじゃねんだけどぉ、し○ごママだけはあたししっくりきたんだよねぇ」 「お前の好みもジャニ系の女装も興味ねえ即刻どけ」 アヤはもぞもぞと俺の上半身から下りて、起き上がった状態の俺と向き合うようにベッドの上に正座した 「では」 と言いながら 「不束ものですが、よろしくお願い致します」 と、綺麗なお辞儀をした 「……」 おおー、綺麗 さすが元剣道部 ……じゃなくて、いやいや 「……」 ソイツはぴたりとも動かないで深々とお辞儀 「……」 「……何故そうなる?」 「行くとこがないのです」 アヤはお辞儀したまま言った 「いや、それは聞いた……」 眠い…もっかい寝たい アヤは顔を上げて、手を伸ばして俺の頭を触った 「寝グセついてる」 「んー……」 ポリポリと俺の頭を掻く手 「あ、何コレフケじゃね?」 「……いてっ」 「あ、ワックスのカタマりか。昨日風呂入ってないもんね」 「んー……」 「沸かしてあるから入んなよ」 「んー……」 「じゃあ、ここにいていい?」 「んー……」 「オッケぇぇ!!ありがとー」 「……ん、ああ…?」 アレ? 「昨日の感じからいくと、なんか置いてくれそうな雰囲気だったじゃんか?」 昨日の感じって何だ? 「昨日……」 ちょっと待て 「確認するぞ、今の寝起きを利用した誘導尋問は無効だ」 「ええっ男に二言は…」 「男女平等の時代だバカモノ」 はぁー…… 「いいか、お前あたかも俺が昨日お前がここに住むことを許可したような口振りだが、まず俺は昨日酔いつぶれたお前をここに運んでやっただけだ」 「送り狼は性にあわないから?」 「てめえ相手に狼になれるわけねえだろボケ」
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