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映画『リング』を彷彿とさせる動きでそれを拾う女
「…エロ本、ですか…」
ああん?
「文句あんのか?」
「いやぁ…コレどっちかって言うと本じゃなくて絵本みたいなもんで、活字はちょっぴりですよね…」
今度は急に敬語モードか忙しいなお前の泥酔脳ミソは
「立派な『本』だろうが」
「まあ、エロ『本』だからね…でもさ、本って何かを伝えたり教えたりするもんであってさ、コレって…」
「絵『本』が幼児に字を『教える』ための物なら、エロ『本』は満たされない思春期のガキに空想の中だけでも濃厚な夢を作り上げるスキルを『伝え』、『教える』、素晴らしい大義名分のもとに作られた物だろうが」
「…ありがたく頂戴します」
「謹んで授けよう」
もういいな、とドアを閉めようとすると、
「イサギくん」
まだ女が呼ぶ
「ああ?」
「…コレなくて、困らない?そのぉ…さ、ムラムラして眠れない、とか…」
ハッ、何を言い出すかと思いきや
「安心しろ、俺はそんなモンじゃ興奮しねえし、どうせソイツはお節介野郎に無理矢理渡されたクソ本だ」
「あ、ほんとぉ…うぉ、でもこれけっこう際どく載ってるよ、ほんとにいいの?惜しくない…?」
てめえは初めて友達にエロ本もらう中坊か
「興奮しねえからいいっつってんだろ」
「…ふーん」
女は酒濁りのどんよりした目でエロ本を眺め出した
…ってオイ、てめえ読むんなら
「どっか別んとこ行けや」
「あぁ~イヤ、公園はホームレスに襲われるし、どっかの建物の屋根下なら寒くないからさ、ここにいるから、ねっ?家には入らないからさ!」
…てめえ、てめえはいいかもしれねえが、
「俺が近所の連中にどう思われると思ってんだよ」
「イヤ、何か思うならイサギくんじゃなくてあたしに対してでしょー。ここの部屋のつれない彼氏に追い出された哀れな行く宛のない純情な彼女、って思うでしょーよー」
しかも持ち物は鞄一つと、際どいエロ本だけの、と女はほざいた
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