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――彼と歩く散歩道、だんだん柔らかくなる雨。
「なあ、晴れてきたんじゃないか?」
「そうだね」
「どうした、疲れたか?」
心配そうに傘を掲げ、握る手から力が伝わる。
でも、決して疲れてなんかない。だって……
「ほら、空が見えるよ」
一枚の板が張り付いたような曇天、そこに僅かな晴れ間が見え日光が顔を覗かせている。
「もう、傘いらないな」
「うん」
――照る照る坊主め、効くのが遅い! でも、ありがとね。
晴れ渡った空を見上げながら、家で揺れているであろうあいつに向かって、私は思いっきり微笑んだ。
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