1.ファーム

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「この街は全てを簡素にし過ぎた。ワシのような未来のない人間も、これから生まれる未来ある赤子も、みんな何桁かの数字にされちまう」 「数に当てはめたくなるのは人の性さ。答えが出しやすい公式が欲しいのさ」 「そうさね。だから俺の占いには誰も耳を傾けない。根拠がないからだ」  ベニヤ板数枚を釘で打ち付けただけのテーブルにコーヒーが2つ。  家というよりは小屋に等しい。 「まあ、話を続けようじゃないか。そうだ、とって置きの話をしてやろう」  中年男はポケットから1枚の紙切れを取り出した。  黄ばんだ白が時間の流れを教えている。 「ミレニアムマザーって知ってるか?」 「ああ。西暦9000年にとある玩具メーカーが開いたフェアだろ?」 「そうだ。千年記を祝ってそのメーカーが特別限定チップを配布したんだ。一部のマニアや子供たちは手にしたチップに歓喜したが、あれは失敗作だったんだ」 「失敗作?」  中年男は部屋の天窓から空を見上げた。  そこには何も見えないのだが、ずっと先に街の生活を見守る管理塔が建っている。
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