1.ファーム

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「そうじゃ。最初から欠陥を仕込んでおいたのさ。何も知らずにそのチップをバージョンアップと喜んで、自分の身体に入れたが最後。自分の意思では外せなくなる……」 「それは何故だい?」 「強迫観念のデータが身体中に流れるからさ。完全合理化、データ化を押し進めていたくせに、旧時代の人間がもっていた“精神”で人を支配しようとはね。それがやがて、自らの死を選択させる仕組みさ」  そこまで話を静かに聞いていた若い男が、険しい表情で立ち上がる。 「どこでその話を聞いた?」  コートの裏から拳銃が取り出されている。  その銃口は確かに中年男の眉間にあてられていた。  中年男はカップから手を離し、凍り付く。 「何だい急に。お、おい……冗談は止めてくれよ」 「もう冗談じゃなくなってるんだぜ」  周囲を見れば、中年男を捕らえている銃口は6つ。 いつの間にか若い男の仲間が5人増えていた。 「いや、これは違うんだ。全部嘘なんだよ。ワシみたいな人間は今の生活に楽しみを見出だせない」  中年男は膝をがくりと折って座り込む。 「だから口から出任せを言って人と触れ合いたかっただけなんだよ。それがあの占いなんだ」
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