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カチャリと音がひとつ鳴った。
「そんな風にしてお情けのカンパを募る浮浪者がいるのは知ってるよ。しかしな、口から出任せをいっても、それが真実と重なれば嘘じゃなくなるんだ」
若い男たちは嘲笑と哀れみを同居させた表情だ。
「重大な企業の秘密をネタに街中で死期の予想占いなんぞやられちゃあ、いつか口をすべらすかもしれねえからな……ここで始末する」
「分かった。もうあんな所で占い師の真似事をするのはやめる。それにワシの所に来る奴はみんな面白い半分の奴らだ。真面目に話なんて聞いちゃいないさ」
中年男はその場で土下座をして泣きじゃくるのだが、若い男たたはせせら笑うだけだ。
真実を嘘にするために動いている男たちに、今名物オヤジという真実が嘘にされようとしている。
「なら姿を消して数日もすれば、みんな忘れるよな。ただのデタラメオヤジだったってさ」
それ以上の返答はなかった。
「じゃあな、おっさん」
そう言って計6人の若い男たちは、再び弾の装填を確かめた。
その時である。
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