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「おま…なにも…」
「んなのどうでもいいだろ?アイツら物扱いしてくれた代わりに、とっておきのモノくれてやるよ」
物として扱った代償に、手首の傷口を意識し出した楽に死ねないよう調合した血液を、細い針状に変え無抵抗で震える相手の首に容赦なく注入しといてやる。
痛みは微塵もない。
血も脈を切ってすらいないから吹き出すこともない。
俺が酷い仕打ちをソイツらにするのは、能力を持って産まれてきただけの子供らを、物扱いしてきた事実が絶対に許せないからだ。
俺は非道な人体実験を繰り返す人間たちを殺すことに、なんの躊躇いもない。
目の前の男は、次第に体が麻痺してきたのか、迫る恐怖に救いの手を伸べるが、俺には微塵も助ける気はない。
目もくれず、カズに掃除が終わったことを伝えれば、厚木くんが応援にこれから来るようでホッとした。
死体が無数に転がる廊下で、疲労した精神を誤魔化すように溜め息を吐き、ドアの前でしゃがみこむ。
毒と同等のこの血は治療にも有効的だが、やはり殺傷を目的とするモノには変わりなくて、
血を意図的に抜いた体では脳に酸素が上手く行き届かないから、判断を誤ったり、こうして暗い思考から抜け出せなくなったりする。
『駿。大丈夫だよ。子供達の為にももう少しだけ、頑張ろう?』
「…ん。俺が子供ら解放しねぇとだもんな」
本当は直ぐにでも子供たちに顔を見せたいけれど、この惨劇を見せない為だと言い訳を盾に、厚木くんが来るのを静かに待つことにした。
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