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ほんとにほんとに本当に。あの子が私の幸せを願う理由が分からないわよ本当に。
手を伸ばせば届く位置にあった胡椒入りの木筒をキャッチ。ふたに小さい穴が空いていて入り口をガリガリ回すとザリザリ胡椒が振りかけられてやだ何これ面白い。
「ボンゴレアはあれよ。きっとあれだ、私を同じ家に住まわせることによって格差社会の縮図みたいなのを再現させようとしているのだわ。きっとそう。そうとしか……」
水玉だらけのシンクには、知らない間に大小様々な胡椒の粒があしらわれていた。誰がこんな散らかした……?
胡椒の木筒を投げ捨て、私の手は再び蛇口に伸びる。締めたり緩めたりをキュッキュキュッキュ繰り返したらあら不思議。蛇口の頭が取れちゃった。
「私は別にマスターの店に不満があるわけでも無いわけでもないし? なんか何言ってるか分からないかもだけど私も自分が何言ってるか分からない」
まるで滝。水道口から放たれる水はかつて見たことも無いほどの勢いで噴出され続けており──
「……あ、あれ?」
なんでこうなってんの?
「じゃ、蛇口の頭がない! あれ、私持ってるけどなんで持ってるの?」
水がシンクを叩く感じがなんか危ないんだけど。これはいったいどうすれば……。
辺りを見渡せばなぜか入り口のガラスが割れているのが。そして同時に開け放たれた入り口の扉。
「おらあフォカッチャ! あんた何の恨みがあって私を狙撃した!?」
うちの店の胡椒入れを握りしめたボンゴレアが店になだれ込んできた。
帰ったはずでは?
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