私の愛犬を探してほしい

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 うちの二軒となり、なんだか近寄りがたいオーラがぷんぷんと立ち上っている物件。  つかつかと歩くボンゴレアの足は見事なまでにそっちの方へと向かっているんだけど……。 「ま、待ちなさいよボンゴレア!」 「ぐえぇ!」  止まらないボンゴレアに焦りを感じた私は、ついうっかり彼女の首を絞めてしまった。弱い力だからこれはセーフ。 「バカやろう!」 「痛い! ボンゴレアが頭を叩いた!」  まさかのアウトだった。  私の首絞めに激昂したボンゴレアが、握り拳を私の頭上にズドン。倍返しとはまさにこのことね。 「なぜ私の首を絞めた?」 「だ、だってボンゴレアが私の制止を振り切るから!」 「制止されなきゃならない意味がわからん」  こちらに体を向けたボンゴレアは腕を組んでぶすっとした表情を浮かべている。私が浮かべたかった表情を先に取られた気分だ。 「だってボンゴレア、あんた今入ろうとしたのはあんたの店の入り口よ?」  うちの二軒となりにある店。  そこにあるのは、ボンゴレアの生家であり、私の働く店“la.頑固”のライバル店でもあるお店。  名を“シュプ・ドゥプ”という。 「入り口よ。だから何よ」 「あんたの家に入るなら裏の通用口からでいいじゃん。なんで店の入り口を突っ切らなきゃいけない?」 「裏からじゃ意味ないからよ」  なんということだ。  私にはこいつの狙いがなんとなく分かってしまったっぽいよ?
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