私の愛犬を探してほしい

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 しかもいじめだなんて人聞きの悪い。 「別にいじめ目的で貴方を罵倒したわけじゃないわよ」 「分かっているさ。ただカッとしてしまったんだ。悪かったよフォカッチャ……ってなぜ私が謝らなくてはいけないのかが謎だが」  マスターの正面に当たる席に腰を落としたモリソバーノ。  私はカウンター席から少し離れたテーブル席に、彼らに背中を向けるようにして座る。  テーブル席が三つ、カウンター席が五つという狭めの店内だ。別にどこにいようと彼らの話に耳を傾けることは出来る。 「イライラしているだなんて、お前らしくないなモリソバーノ。お前の売りは、いついかなる時でも冷静でいられるということくらいなのに」 「……何気に言葉ひどくね?」  カウンター席に両肘をついた姿勢で、モリソバーノが暗めの声を落とす。  マスターの言葉に感情を介入させたら損をするだけということを、まだ学習しないのかしらこの人は。 「で、話ってなによ。貴方がイライラしている原因に繋がるような話?」 「鋭いね。その通りですよフォカッチャ。実は、うちで飼っている犬が今朝失踪してね」  体を向けず、顔だけをモリソバーノの方に向けてやる。彼は相変わらず両肘をカウンターについた姿勢で喋っている。 「あの可愛くない犬が逃げたのか」 「ああ、あのぶっさいくな……」 「……ひどくね?」  くすみにくすみきった毛の色に、常に乾ききった鼻。四本の足先はいつも泥にまみれていて尻尾を振って近寄って来ようものならこちらが悲鳴を上げるでお馴染みなあの犬か。
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