【第61話 : Afresh】

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――世界歴・525年―― ――リリカル城―― 新年になるともに、雪がちらついてきた。 真っ暗闇だった空が、微かに白く見える。 やがて雪の粒は大きくなり、手のひらの熱でも容易くは溶けなくなった。 ふう、と息を吐きだした。 白濁した吐息が雪と混ざる。 そして、消えゆく。 もう一度空を見上げた。 無数に降り注ぐ雪が犇めき合っている。 左右に揺れながら舞い落ちてくる。 明日の朝、この雪は積もっているだろうか。 ( ’ t ’ )(……今は一粒ずつ見える雪も……積もってしまえば、みな一緒だ……) 地面に落ち、溶ける粒もある。 積もり重なる雪の一部となる粒もある。 雪の一粒だけが残ることは、ない。 空から舞い降りている間は個々として存在していても。 やがては、みな同じ運命に辿り着くのだ。
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