できそこない

2/7
1058人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
 酒神(サケガミ)コヨミは、ごく普通の一般家庭で生を受けた。  しかし。  彼女は生まれながらにして、変わり者だった。 『おはよう。おじょうちゃん。』 「おはよう。すずめさん。」  両親にはチュンチュンとしか聞こえないすずめの鳴き声に、コヨミは笑顔で応えて手を振る。  それだけではない。  祖母に呼ばれた修験者が、死んだ子供の霊に乗り移られている最中に、コヨミは平然と言った。 「その人、ウソついてる。」  取り乱す修験者を祖母たちが抑える中で、部屋の入り口を開けてコヨミは続ける。 「あんなにたくさん、大人がいたら、こわいよね。いっしょにあそぼ。」  そう言って、廊下の暗闇に手を差し伸べ、コヨミは夜の闇へ駆け出した事もあった。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!