冗談にならない朝の話

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「すいません、朝早くに…」 うん、分かってるんなら来ないでね いっそのこと、一生来なくていいからね 「隣に引っ越してきた、成瀬隆史といいます」 知ってる、知ってる あたしを振り回したあの成瀬隆史でしょ? 「これ、実家の名産品です。どうぞ。本当は昨日伺う予定だったんですが、来れなくてすみません」 そのまま来なくてよかったのに これも食べ飽きた ってか、本当に隆史君!? 人変わってない!? ドッキリとか、悪趣味なこといわないよね!? ゆりなの記憶は少しばかり残酷さが誇張されていたが、それでも、隆史はきちんとした喋りができる人ではなかった あまりの変わり映えに、ゆりなは驚愕した そして、月日が経ってようやくヤツも人間に成れたんだなぁと納得する 礼儀には、礼儀 物を貰ったら、きちんとお礼を言う ゆりなはその精神に則り、口を開く 「ありがとうございます。これからこそよろしくお願いします」 「あっ、それと…」 綺麗なお辞儀をしたゆりなを気にも留めず、話し出す 隆史の口調が急に変わり、本人の顔さえも、ニヤニヤしたものとなる 綺麗な顔が、勿体無い そう思いながらも、訳が分からないゆりなはキョトンとした顔をする 「ダサすぎて色気ねぇぞ、ゆりな」 ゆりなの頭の中は真っ白だった 隆史が「じゃぁな」と言って去っていったのにも気付かず、ゆりなはしばらく、呆然と立っていた .
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