13人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
チャリ~ン
誰かの足もとで止まったキーホルダーに手を伸ばす
「足もとちょっとすみませ~ん」
身長180cmぐらいの大きな男だった
服装はシンプルなのに、地味というよりは爽やかなオーラをまとっていた
街角で通り過ぎれば、大半の人が振り返るであろう
しかしゆりなは、男のことなんかは気に止めない
むしろ、一言言っても何も反応しない人に、『この人不親切だな~。取ってくれるか、足退かすかしてくれればいいのに』と心で悪態をつく
キーホルダーを手にとって顔を上げると、その人はこちらを見ていて、目が合った
「隆史君…」
ゆりなは血の気が引いていくのを感じた
隆史と呼ばれた男は目を大きく見開いて、ずっとゆりなを見ていた
はっと我に返ったゆりなが少し目線を落とすと、男の手には“ピー”というものがあった
「ギャー!!!!!」
悲鳴を上げながら、ゆりなは全てのものをほおり出し、全力疾走で去っていった
悪魔か妖怪か…
この世のものではないものを見たような、ものすごい顔だったという…
その場には、数枚のDVDと、キーホルダーと、呆気にとられた男が残った
.
最初のコメントを投稿しよう!