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肩を掴んだ手を無理やり外しにかかりながら、沙希は言う
「そんなに言うなら、行かなきゃいいでしょ?あの店に」
……
まるで取っ組み合いをしているかのような手を止め、2人は至近距離で見つめあう
そして、パァーとゆりなの顔が輝いた
力を込めていた手も離し、膝の上の定位置に戻す
「そっか、そうだよね。」
先程とは打って変わって、憑き物はとれたようだった
「世間は広いし、店に行かなきゃもう会わないよね」
「そう、そう」
心底安心したゆりなは、いつものように、沙希と世間話に花を咲かせる
喫茶店でにこにこ話す女子大生2人という光景は、実に微笑ましい
道行く人達は思わず足を止め、和んでいた
しかし、ゆりなは知らない
世間は案外と狭いのだ
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