はじまりの話

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長年のトラウマは、ゆりなにひとつだけ特技を与えた “かくれんぼ” 隆史の声を聞くやいなや、姿を見る前に、ゆりなは身を隠す もちろん、姿を見せる前でもある もしこれが、行動パターンを知り尽くした地元だったら完敗だったが、今は隆史だけが知らない土地… ゆりなにはとっては、3年住んでいた所だったので、どこに隠れられる場所があるか、多少は詳しい さすがに隆史といえど、ゆりなの存在オーラを感知することはできなかったのだろう… ドアは何事もなく住人を向かい入れ、パタンと閉まった ドアが閉まる音を確認し、ゆりなは隠れることをやめた 「危なかった~」 無意識に止めていた息を吐く 「3年ぶりでも、衰えないってすごいなぁ」 ほんの数分の間の、背中に伝わる冷や汗が気持ち悪かった 『もし会っていたらどうなっていただろう』と心配するが、会わなかったことを、自分の経験に感謝していた そして、あることを思い出す 「そういえばあのアパート、空室ってあたしの隣だけだった…よう…な…」 口にして確認するにつれて、生気がどこかに飛んでいくのを感じた .
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