第一章 始まり

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少年――大雲陽心 《オオクモ ヨウシン》―― は落書きで埋め尽くされた 机を見ながら、 静かにため息をついた。 “バカ”“死ね”“消えろ” など…… イジメの常套句が 書き連ねてある。 自分の居場所を見失い、 気の弱さからイジメられ、 どうすることも出来ず、 ただただ耐えるのみ。 いつかそんな苦痛が 消えることを願って。 ガンッ! 机に衝撃が走る。 いつもと同じ。 「ちょっと屋上で 遊ばない?」 言われることもいつも同じ。 素直に従い、屋上で “遊ばれる”だけ。 蹴られたり、殴られたり…… いつもと変わらない。 そして、動けなくなるまで やってから、 “僕”は放置される。 「それが“運命”では ないですよ。」 いつもと変わらない イジメっ子の去った静かな 空間を“その人”は破った。 「だれ?」 「……。」 その男は陽心に近づき、 それから陽心の額に 手を当てた。
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