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渡が受付に着いた時にはゴールの震えはピークに達した。 「なぁ、おっさん。」 そう一言。 ゴールは体を一度大きく震わせ、まるで錆び着いた螺子を無理やり動かすようにゆっくりと、ぎこちなく渡に顔を向けた。 「俺に言うことあるよな。」 この言葉がゴールに止めを刺した。 ゴールの頭の中に過った言葉は誰でもわかるだろう。 ばれてる。 それだけだ。 ゴールは再度ぎこちなく首を動かして受付嬢を見た。 受付嬢は肩を震わせながら入口を見つめる。 完全に笑っている。 いや、堪えている。 ゴールが何か言おうと口を開いた時、渡の口が音を出した。 「あのワイバーンは間違いなくSSランクに匹敵していた。」 もうゴールは振り向けない。 後ろに鬼神がいると確信しているからだ。 「あんたでも苦戦は確実だっただろう。」 ゴールの顔、いや、いたる所から冷や汗が滝のように流れている。 「あの依頼、俺がいなければナディは死んでいたかもしれない。」 謝るにも体も口も動かない。 「俺の嫁だぞ?」 ついにガチガチとゴールの奥歯が音を立て始める。 「…おっさん、今日は寝ないことをお勧めするよ。」 そう言い残して渡は転移した。
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