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帝都の貧困街をひたすら走る一人の男。黒いローブを着て、フードを深くかぶっている。面はしていない。
もちろん、彼は渡だ。
帝都の貴族達が蔑むために、このような住宅街が必要なのだろう。渡は付近の背の高い建物に上り、風の魔法で貧困街全体に声が届くようにし、声をあげる。
「帝都の民よ!突然すまない。俺は公国から来た者だ!この帝都は十中八九、王国と帝国の戦火に巻き込まれるだろう。俺は公国の王の命により、君達を連れ出しに来た!」
何事かと渡のいる建物を見上げる民。
「俺を信じるかは君達の自由だ!俺と共に来る者はすぐに集まってくれ!集まる者は荷物を持つな!場所はカーミア教会前だ!」
そこで渡は転移し、走っている間に見つけた教会の前に移動する。
そこには僅かばかりではあるが、すでに人がいた。時間が経つに連れ、人は増える。
だが一様に言えることは、皆が少し離れた場所から渡を見ているということだ。
誰かが動かなければ自分は動かない。いや、自分から動きたくない。国家の裏切り者のレッテルを貼られたくない。
そもそも、あのローブの男は帝国の軍人で、反逆者を探しているのではないか。
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