二日目

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「耳の穴かっぽじってよく聴きやがれ。」 小声だが男達はその声を耳に入れてしまう。そしてまた怯える。 「世界は自分達を守ろうと必死だ。戦える者は自ら名乗りを挙げ、己の守りたい物を守ろうとする。戦える者でも戦場に行かず、自らの手の届く範囲の物を守ろうとする。 戦えない者は戦う者達の安全を願い、眠れない日々を過ごしているのだろう。 心配して、心配して、強く思っていても想いが届かなくなるかもしれない。不安が収まることはない。」 特別語気を強めているわけではないが、自然と耳に入るような調子で言う。 「だが、お前達はどうだ?私利私欲のために婦女を捕らえ、自らは関係からないと戦争を他の者に託すわけでもなく、その者達のために祈るわけでもない。」 一歩、また一歩と近づくたびに男達は震える。 「ち、畜生!!」 ナイフを持っていた男がナイフを構えて渡に突っ込む。 「悔い改めろ。」 「なっ!?」 男が渡の喉にナイフを突き刺す瞬間に、渡はもう一人を気絶させる。ナイフを持っている男の方を向いた渡の手には三枚の小さな板のようなもの。
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