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「ママ!」
時刻は夕刻。一人の少女が家の中に駆けこんでくる。髪の色は淡い緑色。瞳は桃色。服装は制服。肩には鞄。
「どうしたの、ユウ?」
優しい声で少女、ユウに問う女性。ユウの母親。髪も目も桃色だ。
「パパとママの馴れ初めって何?」
「唐突な質問ね。」
椅子に座り紅茶を飲みながら娘の話を聞く。ユウも女性の前に座り、茶菓子であるクッキーを貪る。
「だってね、陛下が綺麗な絵を見せてくれたから気になったの。」
「あー、あれね…。」
その絵とは、ユウの両親が教会で互いの気持ちを再度確認し合った時の絵である。
「ズルイですよねー、二人とも。私がトンボと格闘している時にデートですから。」
二階から金髪の女性が降りてくる。絶世の美女とは彼女のことを言うのだろう。
「でも、あんな絵を描かれてるとは思わなかったわ。」
「でしょうね。」
恥ずかしそうに言うユウの母。適当に相槌を打つ金髪の女性。
「そんなことより馴れ初め!」
「俺がサンドクラブをぶん殴ったのが始まりだ。」
口からクッキーを噴出させながら叫ぶユウ。彼女の言葉に反応したのは扉を開けて入ってきた人物。
「あら、おかえりなさい。」
「お帰り、パパ!」
「仕事は終わったんですか?」
「ただいま。簡単な依頼だったからな。すぐ終わったよ。」
皆の声に答える男には右腕がない。右頬には火傷の痕。
「メルトは?」
「まだ仕事中。俺は外部講師だから、報告書を書いて終わり。」
この家の主はギルド員。たった今名前が出たのが長女で、新米教師をしている。声が小さいため大変らしい。
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