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―――それは俺が10歳の時のことだった。 「祐希ちゃーんっ!見て見て!真っ白だよ!!」 久しぶりの雪で真っ白に染まった街。 そこで無邪気にはしゃぎ回っていた僕。 僕は大好きな"祐希【ユキ】ちゃん"にむかって叫んだ。 その祐希ちゃんはいつものようにニコニコと微笑みながら近寄ってきてくれた。 「わーほんとだあーっ。ねっ、祐?」 祐希は自分と似ていて色違いの服を着ている"祐【ユウ】"という男の子に向かって笑いかける。 「…それより寒いんだけど。」 そういって公園の入口に立ち止まったままで嫌そうな顔をする。 二人とは違って騒いだりしないようだ。 そんな祐に僕は叫ぶ。 「ならいーよ!僕は祐希ちゃんと遊ぶから、祐くんは帰っちゃえばー?」 そういって祐希にくっついた。 祐希がいればいいとでも言わんばかりに。 そんな姿にいらついたのか、怒りを含んだような顔で二人のもとに近づく。 「‥やっぱり遊ぶ。遊べばいいんだろ?だから離れろ。」 そういって二人を引き離す。 「ちょっとーっ!邪魔しないでよねっ」 僕は不満そうに声をあげた。 そんな態度にもお構いなしに引き離して祐は自分の方へと軽く引き寄せた。 「どーせくっつくなら俺にしとけば?似たようなもんだろ?」 拗ねたような口調で言った。 祐はいつも僕が祐希といると間に入ってくる。 僕が祐希のことを好きなのが気に入らないらしい。 理由は何となく気づいていた。 ――僕は祐に好かれている。 でもそんな時いつだって祐希ちゃんからの視線を感じる。 ――まるで、嫉妬しているような鋭い視線を。 だから僕はいつも祐から離れて祐希の方へと逃げるんだ。
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