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俺と夏目が話をしていたのなんか、津村も課長も見逃すわけもなく。ただ、課長や楠木係長は『察する』という、大人なら出来て当たり前の事が出来て。津村はガキの域を出ないのか、はたまた俺だから一応問い詰めたいのか。朽木社長に気付かれないように、話の内容を聞きに来た。
「…あのな、立ち入っちゃいけない区域って、誰でも心ん中にあるだろ?」
「俺、無い。」
「嘘つけ。未だに、お袋さんの話されんの、嫌がるくせに。」
「嫌なんじゃなくて、面倒臭いだけだよ。」
「同じだろ?要は、朽木社長にも、そういう立ち入り禁止エリアが存在してる。そして、そのど真ん中に、アイツが居る。それだけのことだ。」
中学生の頃から知っていれば、コイツがゴネたらめちゃくちゃ面倒臭いヤツになるのなんか、確認したくないくらいに知っている。話せない内容を輪郭だけ話して、なんとか納得を得るのが一番だ。
「こういうとき、耕司って野暮よね。男女が拗れるのなんて、恋愛くらいしかないでしょ?」
「そっか?生理的にムリとか、ありそうじゃん。」
「一度も話をしたことがない人に、どうやって生理的嫌悪感を抱くのよ?」
「…だよな♪」
「解ったら、浪川君を困らせない!」
「了解です!」
便利な事に榊が『人生の機微』を覚えてくれた。そして少なからず『察する』という作業もしてくれる。お陰で面倒臭い手間は、省けている。
「明日、頼んだぞ?」
「頑張るよ♪」
だから…その笑顔は、津村のために取っておけ。
そんな笑顔を俺に返す榊にため息をついた。
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