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加奈子との楽しい新婚旅行を終えて帰ってみれば、現場は大変なことになっていた。
事情を把握するまでに、この俺でさえ時間がかかった。
「つまり、個人輸入でコーヒーの生豆を取引されている方に、全然届いていないと?」
「ああ、そうだ。」
「尚且それは、1ヶ月以上も、誰も気づかなかったと?」
「その通りだ。」
「……担当は?」
「夏目だ……」
正直な感想。男を追い回していないで、仕事しろよ!と怒鳴ってやりたい気分だ。
華蓮の愚痴では、いまだに時々夏目は、朽木さんに近付くらしい。その度に嫌な空気にされるから、見つからないうちに捕まえて、華蓮が夏目の足腰が立たない状態になるまでにして若い男に充てがうらしい。華蓮は、そんな夏目を『ヘンタイ』と呼んだ。俺的には、どっちの相手も出来る華蓮を『変態』と呼んでやりたくなる。
「あんなのに仕事を一人で任せていた、上司の管理能力を問いたいところですが、面倒臭いので省略します。それに明日からは、堂々と面と向かって文句が言える立場になりますから。」
発見者は津村で、今は榊と二人でその荷物が一体どうなっているのかを追跡調査中だった。
とりあえず、こちらから何もしない訳にはいかない。任せっぱなしっていうのも気が引けた。明日は、入社式だというのに……
「とりあえず、税関に問い合せて……」
「もうやった。お役所め。担当が、もう居ないんだとさ。ゆとりか!?」
「文句、言っても始まりませんよね。出来る仕事をしまくるだけですよ。」
津村に連絡を取る時間も惜しいが、さっさと合流して、榊を内勤に戻して。と、考えながら車に乗り込んだ。
「悪いな、浪川。」
「いや。けど、よく気づいたなぁ。」
「それは久美の手柄。過去の取引記録を読み漁って気付いた。」
「なんか、予感したの。」
津村達と合流して、課長達とは違う見解を聞いた。気になったのは、津村と榊の間に微妙な距離が出来ている事。
「私、会社に戻るね。浪川君に任せた方がいいんでしょ?」
「そうだな、課長には引き継ぎましたと報告してくれないか。」
「了解。」
津村と乗ってきただろう社用車に乗り込むと、さっき俺が来た道に向かい、榊はクルマを発進させた。
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