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「………何かあったんだろ?お前と榊。」
「別れるかもしれない………」
「なんでそんな話になってんだよ?」
「実は、浪川と加奈ちゃんが結婚した後くらいから、久美も結婚の話をするようになったんだよ。俺、まだ自信なんかないし。久美を苦労させるだけかも知んないと思ったら、なんか怖くなってさ………」
「…それで?」
猫背でちまちま缶コーヒーを啜る津村に、視線を向けた。
「一昨日くらいに、久美。午前様で帰ってきて。そのまま風呂に入って泣いてた。昨日それを問い質したら、人事部の藤井寺課長と………見合いしたって。絶対見合いだけじゃないと思うんだ。けど、問い質したら………俺達終わってしまうかもって………」
「お前、馬鹿だろ?」
「はぁ?」
津村は、拍子抜けするほど間抜けた顔で俺を見た。
「お前が信じてやんなくて、誰が信じてやるんだよ。見合いしたって言ってんだろ?だったらそうなんじゃねぇの?藤井寺さんに榊をどうこう出来るほどの度胸なんか、無いと思うけどな。」
「藤井寺さんだって、男だよ。その気に………」
「させないだろうな、榊は。氷雪系の視線に耐えられると思うか?」
「………無いかも。」
「かもじゃねぇよ。無いよ。皆無だ。予想が当たってりゃ、お前をどこかの支店にでも転属させるとでも脅されたかもな。させねぇけどな。」
「話し合わなきゃ………」
「みたいだな。ま、俺の予想なら、榊は結婚したいなんて思っても無いはずだけどな。」
素直というか、肝心なところで間抜けというか。津村は転げ落ちるように車を下りると、榊の携帯に連絡を入れはじめた。
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