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面倒ついでに津村と榊の事が片付きゃいい程度に思いながら、俺は俺で、帰りを待っている筈の加奈子に連絡を入れた。
『明日の朝一番ってことは…』
「泊まりになる。悪いな、俺の為に前祝いの準備してくれてるんだろ?」
『うん。だけど、お祝いならいつでも出来るから。孝志くんは、孝志くんにしか出来ない仕事をして♪加奈、そういう孝志くんも大好きだから。』
「ああ………ズルいな加奈子。今すぐにでも帰りたくなる、可愛らしいことを言ってくれるんだな。」
新婚らしく甘い会話に浸っていると、津村が慌てて車に乗り込んできた。
「あ………悪い。邪魔者が帰ってきた。」
『ううん♪無理しないでね、孝志くん。』
加奈子は、柔らかな笑い声を残して電話を切った。
「で?お前は、いつになったら、邪魔って言葉を………」
「ヤバイ!!久美が来る!!」
真っ青になった津村が、俺に助けを求める視線を送って来た。
「………お前、ひょっとして、めちゃくちゃ重要な事を電話で済ませようとしただろ?」
「帰ったら、俺達のこれからについて話し合おうって言ったら………」
「この前の今日で、別れ話をされると思った榊に逆上された。………違うか?」
「見てたみたいに、何でも分かるんだな。」
間抜け顔で津村は、俺の顔を覗き込んできた。
「何年お前の友達やってると思ってんだ?想像しなくても分かるっての。」
そう、どんな話をすれば、榊の神経を逆撫でするかも。津村にその配慮がどの程度足りないかも。
「…………」
「2人っきりってのが怖いなら。仕方ないから、立ち合ってやる。口は挟まないからな。」
「ああ……助かる……」
また津村は、背中を丸めたまま啜るように缶コーヒーを飲み始めた。
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