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「遅くないか?榊。」
あれから2時間は経っている。それなのに、いっこうに榊が来る気配がない。
「……連絡してみる。」
今の津村に席を外すなんて配慮が出来るとは、到底思えない。俺の方から、席を外すことにした。
「……もしもし?今、何処に………あ、いえ。榊でしたら、俺の彼女ですが…すみません。どなたですか?」
車中からの津村の声が、怒りから焦りの色に変わっていく。車内を覗き込むと、津村の顔からどんどん血の気が引いていた。
「どうした?」
「久美が………高速で事故に巻き込まれて……意識不明の重症だって………」
力が抜け落ちた津村から、携帯を取り上げると、立場を明かしてどこの病院に搬送されたかを聞いた。考えるよりも先に、行動していた。
「津村!!しっかりしろよ!!お前、適当に榊を見てんのかよ!?」
俺に怒鳴りつけられて、やっと我に返った津村。俺は、教えられた総合病院に車を発進させていた。
「お前、課長に榊のことを報告しろよ。」
「プライベートの事だぞ!?」
「馬鹿か?俺達は、拘束時間じゃないか。」
津村から塚本課長に連絡を入れさせて、課長も至急病院に向かってくれると言ってくれた。
「……久美………」
「案外ケロッとしてるかもな。自分のだって言うなら、もっと大事にしろよ。次は、俺、見捨てるからな。」
ダメージ受けまくりの津村に、あんまりなことも言えない。でも、榊に何かあれば、加奈子も悲しむ。そう考えたら、人事には出来ない。榊のとりあえずの無事を祈りながら車を走らせた。
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