日常

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しかし、その目指す曲がり角から、何者かが、踏み出してきた。 もう一歩と共に全身を現したソイツは、全身を鈍い鉄色で覆った騎士だった。 甲冑をがちゃがちゃとうるさく鳴らし、こちらを振り向く。 俺を待ち受けるってか!? ちくしょう……ナメやがって…… 後ろのアイツに追い付かれるよりはマシだ!! 俺はそのまま、走る速度を上げ、懐に手を突っ込む。 引き出したのは、長めの刃物。 こんな時のために、自分で作っておいた特製のナイフだ。 切っ先が日光を反射して、その切れ味の鋭さを主張する。 「くらえ!!」 走り込む勢いのまま、それを真っ直ぐ突き出す。 狙うは首下。 鎧と兜の僅かな隙間目掛け、自慢の得物をねじ込んだ。 金属が触れ合って、不快な音をたてる。 しかしそれも一瞬の事。 鋭さ故か、さしたる抵抗も伝えなかった相棒は、突き刺さるにとどまらず、なんとその首をはね飛ばすまでに至った。 弧を描いて、宙を舞う兜が、ナイフの切っ先と呼応するかのように瞬く。 これで、哀れな騎士は絶命し、鮮血を撒き散らしながら崩れ落ちる。 ……はずだった。 カランカラーン 「そ、そんな……」 空虚な音が兜を転がす。 俺は、確かに騎士の首を落とした。 なのに、なんでコイツは立ってるんだ……? なんで……なんで…… 騎士の首元からのぞく、がらんどうの空間。 その闇に引き込まれそうになる。 転がる兜は空っぽだった。
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