14712人が本棚に入れています
本棚に追加
/510ページ
しかし、その目指す曲がり角から、何者かが、踏み出してきた。
もう一歩と共に全身を現したソイツは、全身を鈍い鉄色で覆った騎士だった。
甲冑をがちゃがちゃとうるさく鳴らし、こちらを振り向く。
俺を待ち受けるってか!?
ちくしょう……ナメやがって……
後ろのアイツに追い付かれるよりはマシだ!!
俺はそのまま、走る速度を上げ、懐に手を突っ込む。
引き出したのは、長めの刃物。
こんな時のために、自分で作っておいた特製のナイフだ。
切っ先が日光を反射して、その切れ味の鋭さを主張する。
「くらえ!!」
走り込む勢いのまま、それを真っ直ぐ突き出す。
狙うは首下。
鎧と兜の僅かな隙間目掛け、自慢の得物をねじ込んだ。
金属が触れ合って、不快な音をたてる。
しかしそれも一瞬の事。
鋭さ故か、さしたる抵抗も伝えなかった相棒は、突き刺さるにとどまらず、なんとその首をはね飛ばすまでに至った。
弧を描いて、宙を舞う兜が、ナイフの切っ先と呼応するかのように瞬く。
これで、哀れな騎士は絶命し、鮮血を撒き散らしながら崩れ落ちる。
……はずだった。
カランカラーン
「そ、そんな……」
空虚な音が兜を転がす。
俺は、確かに騎士の首を落とした。
なのに、なんでコイツは立ってるんだ……?
なんで……なんで……
騎士の首元からのぞく、がらんどうの空間。
その闇に引き込まれそうになる。
転がる兜は空っぽだった。
最初のコメントを投稿しよう!