日常

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「バカな……そんな馬鹿な……」 立ち尽くす騎士と俺。 「ば……化け物……」 思わず後ずさると、騎士の背後の地面からボコォ!!と右手が生える。 「ひ、ひぃ……」 続いて左手。 それらは地面を押さえると、ぐぐっと力む。 土を突き破って、ゴボッとまた一体、同じ姿の騎士が這い出てきた。 「う、……うわぁ」 なんなんだよお、コイツら!! 尻餅をついて、ほうほうの体で逃げ出すも、何かに逃げ道を塞がれて…… 恐る恐る見上げれば肩に大きな刺を生やし、袖の無いおかしな服をはだけさせた男。 丸い頭部に、刺々しい仮面をつけたような意匠の、真っ黒な兜が俺を見下ろしていた。 「あ、あ……」 「………」 ……ま、まだだ! ナイフを握りしめる。 「俺の速い突きがかわせるかあああ!!」 コイツは中身がある!! 今だ! 「この至近からでは逃げようがあるまい! 死にやがあああ……れ……」 つきたったナイフはピクリとも動かなかった。 俺の手から滑り落ちるナイフ。 「そん……な……」 膝から崩れ落ちた。 そして黒い兜が叫ぶ。 「……俺の名を言ってみろぉおお!!!」 「し、知らねえよおお……俺はただ、最近、この街はヘムタイトがとれるって聞いたから……」 「そうか、おまえ死にたいのか……」 「ち、違う!! もうしねえよ!! お願いだ!! 反省してる!!」 「俺はウソが大嫌ぇなんだ!」 「ほ、本当だ!! ……許してくれよぉ……」 「……よし、もう一度だけチャンスをやろう」 その言葉に俺は顔をあげる。 「……俺の名を言ってみろぉ!!」 そう言って懐から短い筒を取り出すと、それを額に突きつけた。 俺は、これが火を吹いて、相棒の足に穴をあけるのを見たから知ってる。 「そ……そんなもの撃たれたら死んじまう!! なっ!! な!」 「ふん、自業自得だ」 「あ、あんた騎士なのにそんなもん使うなんて卑怯だろ!!」 「おれは剣がすべてだなんて思っちゃいねぇんだ!! 要は強けりゃいいんだ!!」 「そ、そんな……」 「どんな手を使おうが勝てばいい!! それが全てだ!!」 ぐっと、筒にこもる力が強くなる。 見れば、ボウガンのような引き金に、指がかかった。
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