日常

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その彼らが、気絶した男を前後で抱え、息もピッタリに運んでいくのを見届ける。 さっきの男は単なる強盗だ。 最近はヘムタイトが採れるようになって、街がさらに潤うようになった。 それに伴い、潤った財布を狙って、街の外からああいう輩が入ってくるようにもなった。 さっきも、こそこそと話し合ってる二人組みの横を通ったら 《そこの二人、今から強盗するらしいよ》 とかいう天の声が聞こえたので、後をつけてみたら案の定、ご婦人に狼藉を働こうとするではないか! だから、こうしてとっちめてやった次第である。 《ねえ、新型の調子はどうだい?》 「駄目に決まってんだろ」 手元の銃へと目を落とす。 サイズは小さく、言わばピストルに近い。 ショットガンのように、銃身が横に二つ並んだ構造をしており、引き金も二つ。 左右で一発ずつ撃つ事ができ、引き金を一緒に引けば同時発射……という感じだ。 小型化により携帯性を高め、銃身を増やして連発式に……という設計思想。 こう聞けばデリンジャーと似ているようだが、忘れてはならない。 ……これは火縄銃なのだ。 ホイールロック式やフリントロック式……つまり引き金を引けば火がつくタイプではなく、予め、火がついている縄を用意しておかなくてはならない。 そんなものを懐に入れるなんてとんでもねえや……となる。 必然的に、懐から出して、火打ち石で火縄に火をつけて、セットして…… 強盗するのが分かってたから前もって準備できたものの、いつも、そううまく行くはずがない。 しかも、威嚇で地面を撃ったのに、なして太ももに当たるのか。 慌てて取り押さえ、『無かった事』にしたから良かったものの。 俺以外だったらどうなっていたことやら。 銃身が短いから威力も低いし…… 結論から言うと、リベレーターもびっくりの産廃性能である。
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