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言っておくが、決して俺の案ではない。
言い出したのはキースだ。
曰わく「ちょいと小さくしてみましょうや」
携帯して護身用に使おうという。
……勿論、俺は反対した。
しかし、小型化による携帯火器の非有効性を証明できず、開発を押し切られてしまった。
そりゃそうだろ……現実に拳銃あるんだから……
でもな、早すぎなんだよ……
そいで、その試作品が回ってきたのだ。
俺なら、暴発しようが誤射しようが、関係ないからいいんだが……
こんなもん作ってる暇があるなら、普通の銃、一丁でも多く作らんかいと言いたい。
とにかく、今回のコレは実践試験結果からも判定は明らか。
却下だ、却下。ド却下だ。
裏路地を後にする。
表通りにでると、近所のおばさんが声をかけてきた。
「おや黒騎士さん、空騎士さん達が誰か担いでったけど、また泥棒退治かい?」
「まあ、そんなもんです」
「そうかい、そりゃまた有り難いねぇ……」
俺がこの街に来てから、もう1ヶ月ほどになる。
当初の目論見通り、街にもだいぶ溶け込み、こうして気軽に話し掛けてもらえるようになった。
初めは、見た目で怖がられていたものの、善行の数々を無償で行い、腰の低い挨拶をしまくる事で、住民の態度も軟化していき、見た目とのギャップからか、一躍人気者である。
まあ、それを狙って被ってんだから当然だな。
そしてついたあだ名が『黒騎士さん』
黒騎士『様』ではない。
黒騎士『さん』である。
ここ重要。
いつも兜を被り、ベルモット隊とも仲良くしている事から、住民達の間では騎士のイメージがついたらしい。
んで、黒い兜だから黒騎士。
そして、『様』ではなく『さん』という点が、彼らの親しみの全てを表している……気がする。
ちなみに空騎士とは、さすらう鎧の事である。
空っぽの騎士。
略して空騎士。
ちゃんと、さすらう鎧とか呼んでくれる人もいるが、大抵こっちだ。
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