日常

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おじさんの情報に従い、足を進める。 しばらくすると、三本のクワが描かれた看板が見えてきた。 ここらでまあまあ有名な酒場、『三本の鍬』だ。 人気メニューは『ナウス様のびっくりサラダ』である。 屋敷の畑で取れた新作を仕入れて、それを使った料理を出す……というものらしい。 サラダとついてはいるが、主に野菜なので便宜上そう呼んでいるだけであり、実際は煮るなり焼くなり好きにしろ! 状態なんだと。 つまりは新種の安全性確認及びおいしい調理法を探すために、お客を実験台にしてるんだが……客の方も分かってて頼んでる辺り、物好きが多いというかなんというか…… 客に言わせて見れば、珍しくて大体おいしいメニューと、たまにハズレに当たるちょっぴりのスリルがたまらないんだとか。 ……この街はバカばかりである。 当然、新種がいつも収穫できるわけではないので、完全限定、幻のメニューとなる。 看板に、入荷のサインである、毛糸で出来たナウス人形がつるされるや、客が押し寄せ、あっという間に完売っていうんだから凄まじい。 常連客は、この『ナウスの日』を虎視眈々と狙っているんだと。 ……因みに俺が来てから、二度あったらしいが、まだ一度もありつけていない。 そんな酒場を今日は無視して、店の裏にまわる。 瓶やタルが無造作に散らばり、まさに裏路地といった様相を醸し出す。 「だから、瓶を捨てるなと何度言ったら分かるんだベンタス……」 はいはい回収回収。 ……いや、これを再利用したおしゃれグラスが高く売れて、いい小遣い稼ぎになるとか、そんな事は決してないぞ。 ……決して。 いくつかの瓶を屋敷の方へ移動させていくと、そのゴミ山の奥で、オレンジのモッサモサした生き物がふぁさふぁさしているのを見つけた。 俺はそいつを、モファッとひっつかみ、ふふぁあと引き出した。 「見つけたぞチャッピー。こんなとこにいたのか……ロイが心配してるぞ」 ターゲットを捕獲。 任務完了。 俺の手の中でムフムフ言ってる、この不思議生物はボルン。 この世界では犬や猫と並んで、割とメジャーな生物らしい。 手足を持たない球体上の彼らはボルンボルンと転がって移動する。 わさわさする毛を掻き分けてよーく探せば、つぶらな瞳が二つ見つかるので、一応前後の区別はあるらしい。
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