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しかし、いくら探せど口らしきものが見当たらないので、どんな食生活なのか非常に気になったが、飼い主の少年が親切にも教えてくれた。
なんでも、基本雑食性で、毛から水分や養分を吸収する……らしい。
人間は大丈夫なのかと思ったが、なんでも生き物からは吸わないし、吸えないとのこと。
最悪、水だけでも生きていけるというから驚きだ。
まあ、種類は多いわ、個体ごとに好みは変わるわで、一概には言えないんだが……
昔、コレを研究して人もいるらしいが、さぞや研究しがいがあった事だろう。
……そしてそんなボルンの中でも、このチャッピーという個体は、飼い主からはぐれてはこの近辺に出没するんだから、ある意味あの店の常連客と言えるかもしれない。
いやあ、初めはナウスに聞き返されて、この世界にはペット文化が無いのかと思ったが、猫やら犬やらボルンやら、この手の依頼は多いので、概念的には存在しているようで安心した。
オレンジの毛玉を両手で弄びながら、飼い主の少年を訪ねる。
彼は喜びと共にすぐさま飛び出し、折れた釘数本と不思議生物を交換する。
そして、物々交換が終了するや、少年は相棒を大事そうに抱え風呂場へと駆けていった。
それを見送る俺。
釘を手甲と同化させて、ミッションコンプリート
さて、んじゃあ、あそこへ行きますか。
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「くらえ!! ピーチスラッ--シュ!!!」
「ぐわー!!」
「ピーチスラッシュだー!!」「いけー!!」「やっちゃえー!!」
ところかわって、集会所。
正確には喫茶店(仮)の裏にある会議室である。
そんなところで何をしているかというと、たくさんの子供達を前に、『ももたろう』を絶賛上演中。
監督は勿論、俺。
脚本も俺。
演出も俺。
主演も当然、俺。
配役は、ももたろうに留まらず、おじいさんおばあさん、村人達から犬畜生共に鬼人変人に至るまで、全て俺。
いわゆる一人劇というやつである。
劇団ぼっちとは俺の事。
「ふん……たわいもない奴らだったウキ」
猿の顔を模した兜が言う。
ササッと立ち位置を移動しつつ、兜を犬顔に変形させ
「はっ!……猿風情が何を偉そうに……お主はそこでウキャウキャ騒いでいただけではないかワン」
猿に向かって吐き捨てる。
「……何かいったウキャか駄犬」
「…やる気かワン」
「なにをウキ」
まさに一触即発の雰囲気。
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